スマホが当たり前になった今でも、詐欺電話は減るどころかむしろ増えています。
警察庁の統計によれば、特殊詐欺の被害額は年間数百億円規模にのぼり、被害者の多くは高齢者です。しかも最近は「孫を名乗るオレオレ詐欺」だけでなく、税金の還付を装う手口や、宅配業者を装う偽SMSまで広がっています。
ではなぜ、こんなにも電話を使った詐欺が根強いのでしょうか。
一番の理由は「相手の声を聞くと、つい信じてしまう」からです。声には文字よりも強い説得力があり、人は“緊急です”“今すぐ対応してください”と迫られると冷静さを失いやすいのです。
私自身も、ある日「大阪県警です。あなたのクレジットカードが詐欺集団に使われています。あなたが事件に関与している可能性もあるため、電話をしました。すぐに警察署まで来てください。」という電話を受けたことがあります。
頭では「怪しいかも」と感じていても、相手が私の個人情報をある程度持った上で電話してきているため、信じそうになった経験があります。どこから漏れたか分かりませんが、相手が自分の個人情報を持っていると結構焦りますし、その時心臓がバクバクして手に汗をかいたのを今でも覚えています。
だからこそ、「電話口で冷静さを取り戻す仕組み」が必要です。
本記事で紹介する“魔法の一言”は、まさにそのためのもの。相手のペースを崩し、自分の心を守るための強力な武器になるのです。
詐欺師の常套句と心理操作の仕組み
詐欺師が使う言葉には、いくつかの共通点があります。
まず多いのが「今すぐ」「急いで」「大変なことになりますよ」という焦らせる言葉です。時間的な余裕を奪うことで、考える力を封じ込めてしまうのです。
次に登場するのが「専門家らしさ」を演出する言葉。
たとえば「警察です」「金融庁の者です」と名乗ったり、難しそうな用語を並べたりします。これにより、相手は「詳しい人が言っているのだから正しいに違いない」と錯覚してしまいます。
また、心理的に有効なのが「権威の力」と「不安の植え付け」です。人は権威ある立場から言われると逆らいにくいもの。そこに「放っておくと損をします」「今手続きしないと取り返しがつかなくなります」と脅しを混ぜられると、冷静な判断が難しくなります。
大阪県警を名乗るところから電話が来た時は、大阪に住んでいないにも関わらず「今すぐ来てください」と言われました。行けないことを伝えると「緊急を要するのであなたの都合は関係ない」や「今すぐ動かないと法的措置を取る」など、どんどん脅すような口調になってきました。
このように詐欺電話は、まるで釣りのようなものです。餌となる言葉を投げて、相手が食いつくまで揺さぶりをかけ続けます。そして一度でも反応すると、あっという間に釣り上げられてしまうのです。
だから大切なのは、詐欺師の常套句を「これは餌だ」と認識できるようになること。知っているだけで、だまされにくさは格段に高まります。
「魔法の一言」が持つ心理的な効果
詐欺電話に対して有効なのは、相手を論破することでも、怒鳴り返すことでもありません。
むしろ、シンプルな一言で会話を終わらせることが一番安全です。ここでいう“魔法の一言”には、2つの効果があります。
ひとつ目は「自分の心を落ち着ける効果」です。パニックになると冷静な判断ができなくなりますが、決まった言葉を口に出すだけで、思考が一度リセットされます。いわば「緊急時のセーフティボタン」です。
もうひとつは「相手のペースを崩す効果」です。
詐欺師は台本のように決まった流れで話を進めます。そこに想定外の言葉を差し込まれると、リズムが狂って続けにくくなるのです。プロの詐欺師でも、会話の主導権を奪われると急に言葉に詰まることがあります。
魔法の一言の正体と使い方
ここまで読んでくださった方は、きっと「その魔法の一言って何だろう?」と気になっていると思います。結論から言えば、それはとてもシンプルです。
「家族(または知り合い)に確認してから折り返します」
たったこれだけです。短いですが、詐欺師にとっては大きな壁になります。
なぜ効果的なのか。理由は二つあります。
- まず「折り返す」と言われると、詐欺師は自分の連絡先を残す必要が出てきます。しかし当然、本当の番号を教えることはできません。結果として、会話を続ける意味がなくなるのです。
- もう一つは「家族に確認する」という部分。詐欺師は「本人とだけ話を進めたい」と考えています。他の人に相談されると一気にバレる可能性が高まるため、ここで一気に勢いを失います。
私が実際にこの一言を使ったとき、相手が急に押し黙ったのはまさにこの理由からです。彼らにとって「第三者の存在」は一番の敵なのです。
この一言は、特に高齢の方にとっても使いやすいものです。難しい言い回しではなく、普段の会話で自然に口にできるからです。しかも、相手を傷つけたり怒らせたりしないので、「もし普通の電話だったらどうしよう」と不安になる必要もありません。
もし会話が続いてしまったら?安全に切り抜ける追加フレーズ
魔法の一言はとても効果的ですが、なかには粘り強く食い下がってくる詐欺師もいます。「折り返さなくて大丈夫です」「今すぐでないと間に合いません」と畳みかけてくるのです。
大阪県警を名乗るところからの電話の時は「今電話を切って、詐欺仲間に電話をされる可能性があるので切らないでください。切ったら犯罪を認めたことになるけどいいですか?」と言ってきました。
そんなときのために、いくつか“追加フレーズ”を用意しておくと安心です。
おすすめは次のような言葉です。
- 「とりあえず番号を控えますので教えてください」
- 「電話2台持ちで、このままかけられるので番号教えてください」
- 「録音するので一旦教えてください」
どれもシンプルですが、詐欺師にとっては強烈なブレーキになります。
私の場合は携帯2台持ちが刺さりました。「電話切らなくても電話かけられるんでとりあえず電話番号いいですか?」としつこく電話番号を聞こうとすると、怒って相手から電話を切ろうとしてきます。「え?緊急なんですよね?切らないでください」と言っても切られました笑
なお、長く会話をすると、逆に墓穴を掘って相手にペースを与えてしまう可能性があるため、あれこれ質問したり、相手を追い詰めようとせずに、早めに切るようにしましょう。
あくまで“会話を早く終わらせるための道具”として使うのが正解です。
まとめ
ここまで見てきたように、詐欺電話は誰にでも起こり得る身近な脅威です。
しかも相手は巧妙な言葉と心理操作で、こちらの冷静さを奪おうとしてきます。だからこそ、「魔法の一言」を持っているかどうかが大きな分かれ道になるのです。
改めて整理すると、対策のポイントは3つです。
- まずは「詐欺師の常套句」を知っておくこと。急がせる言葉や権威を装ったセリフに出会ったら、心の警報を鳴らしましょう。
- 次に「家族に確認してから折り返します」という魔法の一言を使うこと。相手のペースを崩し、自分を守る最初の盾になります。
- そしてもし粘られた場合は、「番号を控えます」「録音します」といった追加フレーズで会話を早めに終わらせること。
私自身、これを知ってからは「詐欺に遭うかもしれない」という漠然とした不安が減りました。むしろ「来るなら来い」というくらいの気持ちで電話に出られるようになったのです。
お金を守ることはもちろんですが、同時に心の安心を守ることも大切です。詐欺師に動揺させられ、怖い思いを引きずるのはつらいもの。だからこそ、事前の備えが自分や家族を守る最大の防御になります。
魔法の一言は特別な呪文ではありません。
誰でも使えるシンプルな言葉です。ですが、その効果は想像以上に大きいもの。今日から家族と共有し、電話のそばにメモを貼るだけでも、あなたの暮らしの安心度はぐっと高まります。
「大事なお金と心を守るのは、自分自身の一言から」──これを合言葉に、どうか安心して日々を過ごしていただければと思います。

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